茶席の風景

茶席のこちら側からの風景が好きです。
今日も初めて出会う茶を、
初めて出会う器で、
初めて出会う人たちに淹れている。
茶に対しても、人に対しても予習は一切無い。

入れ替わり立ち代り、時間の出来たスタッフが
目の前に座ってお茶を飲んでくれる。
名前は何と言うのか、どこの出身なのか、
何歳なのか、何でこの食養山房で働いているのか。
知らない。
目の前に座ってくれたからには、
美味しい一杯を一緒に楽しみたいし、
ほんの少しの休憩時間を癒してあげたい。
そんな気持ちでお互い向かい合っていると、
その一席の間で相手を知ってお茶が終わる頃には
距離が縮まっている。

淹れながらこれってお茶との向かい方と似ているなと感じる。
名前も、どこの産地も、いつの時期に採れたものなのかも知らないお茶を淹れる時、茶葉の外見や香りの記憶から淹れ方を探っていく。
最初に話かけてみて、それから反応をみてまた話かける。
どんな事が得意で、どんな事が苦手なのか。
どんな風にしたら笑顔を見せてくれるのか。
先入観なしに、向かい合う。

茶は人と知り合う過程と同じ。
茶席のこちらからの風景は、
そんな事を教えてくれる。